2008年10月20日
ジェット
その女性は、常連さんが連れてこられたお友達でした。
服装は黒系でまとめられていて、とても落ち着いた若い女性です。
控え目に話されるけれど、雰囲気がとても明るいとても感じの良い方でした。
初めは常連さんに連れて来られて店の様子見だったのですが、次来られたときにはジェットのネックレスをオーダーして帰られました。
真黒なジェットは素材が木の化石なのでとっても軽いです。当然、石ではありませんから燃えます。
日本では葬祭用の装飾品として扱われていますね。
軽い石ですから、ネックレスには最適なのです。
でも葬祭用の装飾品ですから、普段に使えるバージョンとして作る場合には、他の付属品と合わせてきらびやかに仕上げています。
色が黒だから、結構ゴールドの金具やロンデルは合うのですね。
その女性を百合子さんとしましょう。
百合子さんは、葬儀用に使いたいから他の付属品は無しでお願いします。とのことでした。
で、とりあえず仕上げてお渡しした後、それに合うイアリングも作ってほしいと頼まれました。
デザインも無難なものにしてお渡ししたのです。
それまでに何度か会ううちにお互いに気心が知れてきて、ざっくばらんにお話できる関係になりました。
そしてしばらく経った昨日、同じジェットを使った指輪を作ってほしいという依頼が来たのです。
けんと「黒の指輪は、ネックレスやブレスト違って結構目立ちますよ。上をジェットや他の金具をまぜて、下は水晶にしましょうね」
百合子「いえ・・・すべて黒でお願いします」
けんと「そうですか・・・はい。分かりました」
その間も彼女はにこにこしています。
けんと「でも百合子さん、本当に黒が好きなんですねぇ〜」
百合子「・・・ええ・・・・・」
さて、どんなデザインにしようかな・・・と考えながら3パターンほど仕上げました。
今日それが仕上がったので彼女に連絡をしました。
すると、彼女は東京に行っていたのです。
けんと「今東京なんですね、いいなぁ、土日を使っての観光ですか?」
僕は軽いノリで話します。
百合子「いえ・・・ああ・・・」
なんか様子がいつもと違っていました。お母さんと一緒だと言っていましたのでそのこともあるのかな、と思い、その場では用件だけを伝えて電話を切りました。
その後彼女から連絡が入りました。
話では、東京に行ったのはお父さんの容態が急変したからだということでした。
百合子さんとの距離が近くなったとはいえ、あくまでも「お客様」です。個人的なことを詮索するのも良くないと思い、細かな事は一切お聞きしませんでした。
彼女の話の断片から分かった事は、何らかの事情でお父さんとは別れて暮らされており、お体がずっと悪い状態だったこと。
彼女が葬儀用に・・・とオーダーした時の表情を思い出しました。そして、黒のイアリングに黒の指輪・・・最も、イアリングと指輪は葬儀用では無いかも知れません。
彼女の中には、近い時期に大きな悲しみがくる事の「準備」のための覚悟だったのかも知れません。
ジェット
争いや怒り、困惑などの束縛苦しみから開放し混乱を静める力があるとされ、その持ち主を守護し、様々な病気や否定的なエネルギーを吸収すると信じられ、そして病気や他者からの攻撃から守護してくれると言われています。
またその色と軽さから、19世紀頃より喪服用の装飾品として普及したそうですし、古代ローマでは修道士のロザリオに用いられていたようです。





